マルクスの壁 [作品評論]
経済学というと「お金の学問」であり、社会科学にしては珍しく「実学系の学問」というイメージがある。個人的には全く無関心な分野であり、専門知識の持ち合わせなどほとんどない。
アダム・スミス、カール・マルクス、ジョン・メイナード・ケインズといった経済学の巨匠たちの伝記+思想紹介が平易な文章で書かれており、かつ訳文もよくできていて読みやすい。
スミスとマルクスについては人類学・社会学でもその理論はよく援用されるのでそれなりに知っていたつもりだったが、彼らがどのような経済現象から「個人と社会とのかかわり方」を一般化・理論化させていったのかについては、正直この本を読むまでほとんど知らなかった。目から鱗が落ちた感がある。
この本はあくまで基本知識を習得し分野全体を俯瞰するための入門書であり、これを踏み台にして巨匠たちの原典にアプローチするかどうかが、真の教養を得られるか否かの分かれ目になるのであろう。とはいえ、どうも経済学という学問自体に面白みを感じない自分としてはこの本止まりになってしまいそうな気がしてならない。
しかし、せめてマルクスくらいはオリジナルに挑戦したいものだ。その思想の帰結がどうであったにせよ、20世紀最大の思想家といえば間違いなくマルクスであり、この人の著作を読まずして「社会」を論じるのは知的怠惰と言われても仕方がない。
ということで一応買いました。
この本、今も目の前にあるのですが、最初のページにある
「わが忘れえぬ友、プロレタリアートの大胆忠実にして高貴なる戦士ヴィルヘルム・ヴォルフに捧ぐ」
という一節にすでに圧倒されちゃって、なかなか先に進みません。笑
単なる学問書以上の「何か」がありますね、きっと。
しかも第一巻全300ページのうち、実に60ページが序文。格式が高いというかハードルが高いというか・・・・・・・
まあ、地道に読んでみようと思います。
マルクスの著作は、文献学的にもかなり問題にされているので、慎重に読んでみてください。
by 言語学者 (2006-04-21 21:51)
言語学者さん
コメントいただきありがとうございます。
文献学的に問題になるのですか!さすがその筋の「聖典」ですね。あの作品のどういうところが問題になるのかにとても興味があります。
by しょちょう (2006-04-25 17:57)