１１年前のある冬の日（２）

ちくりんの記事からの続き・・・・・・

わずか数日間の生活をともにすることで、僕とくだんの１９歳少年（ブラザー）はすっかり意気投合していた。人生背景において何一つ共有することないこの２人であったが、人格のかなり深い部分で何か共通するものがあるようだった。

さて、このブラザーの態度がいつのまにか伝染してしまった僕は、この宿の一室をまるで自分の下宿の部屋のように、我がもの顔で散らかし放題に使っていた。そんなところへウブな新しい客がやってきた。

僕とブラザーはまるで何十年もここに住んでいる牢名主のように２人の若い男を部屋に迎えた。そして僕がここに来た初日に受けた衝撃と同じものを感じているであろう彼らを見て密かにほくそえんだ。ふふっ、帰りたくなっただろう、でも帰れないんだよ、なんたってここは吹雪に閉ざされた日本の最果てなんだから・・・・・・こうして、ブラザー、僕、そして新しい客２名の奇妙な同室生活が始まったのだった。

新しい客のうちの一人は、背が高くさわやかで、軽快なトークに加えてギターの弾き語りなんかもこなしてしまうような、それこそ洒落たスキー場にでもいそうな感じの青年だった。おまけに彼はT大法学部の学生だという。ぱっと見明らかに場違いなこの青年が何故こんなところを放浪しているのか全くもって不可解だった。

しかし、この青年も僕とブラザーに同化するのにそう時間はかからなかった。

 この青年は、その見かけとは裏腹に、当時僕が友達になるための必要条件として他人に課していた「アホさ」と「下ネタ」を充分すぎるほど装備しており、何食わぬ顔で部屋の窓から「＊＊コー」と絶叫するようなチャーミングなキャラクターの持ち主であった。おまけに到着早々、厳寒の大地で流氷に向かってケツを出すようなパフォーマンスまで見せ付け、「脱ぎ癖」まであることが判明したのだった。これはもう１２０％の得点で合格といった感じである。

こうして、このさわやか青年「ちくりん」はわずか一日にして僕とブラザーから仲間として「認定」されたのだった。

同じ宿には他に、女の子も５人泊まっていた。学生４人とフリーターで、やはり冬の知床をわざわざ選んでやって来るだけあって、なかなかのツワモノ揃いだった。ちなみにそのうちの一人はこの人。結局、ブラザー、ちくりん、僕、もう一人の男性、それから女の子５人は毎日のように知床の原生林をクロスカントリーしたり、雪に埋もれた露天風呂に入りにいったり、夜は激しく歌ったり踊ったりと、あれよあれよという間に一週間くらい連泊し、気づいたら宿の冬季閉鎖日となり強制退去させられることになってしまっていた。

みんな本来２泊３日の予定で来ていたはずなのに、誰一人途中で帰らなかったというところからして、いかにこの秘境の宿とその風変わりな客達が非日常的な空間を作り出していたかが伺える。２０代前半の若い男女がこの世から隔絶された場所に一週間閉じ込められるとこれほどまでに異様な盛り上がりになるということを身をもって体験させられた。

そして帰りの暴走バス（斜里バス）の中でちくりんが

「春になって宿が開いたら、またここに集まろうよ」

と提案すると、一人の例外もなく、全員が手をあげたのだった。

続きはちくりんのブログにて

コメント 3

先日から楽しいプログ読ませてもらってます＾＾
Ｔちゃんとの出会い。。。
旅の好きな人は一人旅が良いといいますね。
複数で行動してると内側に意識がいってしまうけど、一人だと人との出会いが楽しいって＾＾
１９歳の可愛かったＴちゃんももう３０歳ですもんね～
って、あんまり変わってないって～？　(￣m￣* )ムフッ♪
by ムーミンママ♪ (2006-03-08 22:01) 

しょちょうさんの目から見たちくりんさん、ちくりんさんの目から見たしょちょうさん像が面白いですね。続き楽しみにしています。
by gutta (2006-03-09 02:31) 

ムーママさん
そうですね、基本的に集団旅行は好きではないですね。ムフッ♪
やはり旅は一人でするもの。ムフッフッ♪
Tちゃん今でもカワイイですよ。ムフッフッフッ♪

ぐったさん
今回はこんなこと書いたので、ちくりんが逆襲してくるのではないかと警戒しています。
by しょちょう (2006-03-10 13:55)