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靖国参拝について [その他いろいろ]

 靖国参拝については、語ること自体が軋轢を生じるので正直語りたくないのですが、避けては通れない話題なので語ります。

 僕は靖国神社に行ったこともないし、行くつもりもありません。ただ「行く」という人を止める権利もありません。
 

 僕の持論は日本の侵略戦争を起こした主役は「日本の国民」であり「日本の世論」であるというものです。A級戦犯といわれる人達には大きな責任がありますが、戦争を起こした主役は彼らではないと思っています。日本の大衆です。大衆がマスコミや軍部に煽られたのだとしても、煽るための「火種」は大衆側にあったはずです。そもそもマスコミや軍部だって大衆の一部なのです。

 しかし、終戦時、国として何らかの責任を取るために誰か特定の個人を「悪」にする必要が生じた。それが戦犯、特にA級戦犯でしょう。この人達の存在によって日本国民は「加害者」ではなく「被害者」となった。ところが、戦争世代の日本人達の間にはこのA級戦犯たちに対する心の負い目がある。それはこの戦犯たちが「悪」となり、自分達の罪をしょいこんで裁かれたことで、自分達自身の責任論を考える必要がなくなり、助けられたと感じているからです。だから日本人にとってA級戦犯は本当の意味での「絶対悪」ではなく、「一応悪ということになっている人達」という認識が定着しているように感じます。靖国神社に対してあまり「悪」というイメージがないのはこのためでしょう。だから麻生さんや小泉さんらの世代が靖国に行きたがるのも理解できます。彼らにとってはA級戦犯は多くの戦没者たちのなかのsome of themでしかないのです。彼らは戦没者全体に対して敬意を表したいと考えているのでしょう。

 一方、韓国・中国の靖国参拝への反対運動も非常によく理解できます。韓国・中国の人達にとって「A級戦犯=絶対悪」という図式は全く妥協することない図式として存在しています。この図式は当時の日本と占領軍の都合によって作り出され、そして海外に輸出された図式ですので、韓国・中国側の問題ではありません。そしてこのperceptionの当然の帰結として、「絶対悪が奉られているところに首相が行くのは何事か!」という議論になります。例えて言うならナチスの幹部が埋蔵されている集団墓地にドイツの首相が行くようなものです。たとえ、ナチス幹部以外の多くの兵士が埋められていたとしても、そこに妥協の余地はありません。なぜなら「絶対悪」が存在している時点で、思考はストップするからです。

 A級戦犯の戦争責任は当然あってしかるべきですが、彼らが「形の上での悪」であって「日本の大衆は被害者」という日本側の認識には大きな疑問を感じるし、彼らを「悪魔の化身」として扱い、彼らが関与しているもの(例えば靖国神社)にはすべて「絶対悪」のレッテルを貼るのもいかがなものかと思う。戦後60年たったわけですが、あの戦争の本当の責任はどこにあったのか、「ナチス=A級戦犯=絶対悪=思考の余地なし」という姿勢で本当いいのか、そういうことを見直してみる時期にきたのではないかと思う。


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三平太

うちの寺の所属する宗派が特に靖国問題を扱うのに熱心だという理由もあって、僕も正直このトピック避けたい一人ですね。戦争をめぐることに興味があるならば、靖国神社には是非いってみてください、おもしろい発見がいろいろとできる場所です。
僕の中に息づく日本的価値観でいけば第2次世界大戦全てひっくるめて『けんか両成敗』という風に裁くのが一番しっくりきます。今の国際秩序では考えられないことですが、why not?という感じです。
by 三平太 (2005-05-09 05:11) 

いつの頃かは定かではないですが非公式にではありますが<中曽根氏かな?>A級戦犯を分祀する動きがありその旨をA級戦犯のご家族に伝えたところ東条氏の娘さんが反対したそうです。A級戦犯の中には岸氏のように生きて総理になった人もいるのに、死刑になった人たちは自分が死ねば日本のためにもなると死んだのに<分祀することは>これでは死に損ではないかと。これを言われて分祀しようと動いていた人たちは答えに窮したそうです。
事実上、戦勝国であるアメリカ一国が裁いたことの問題点が今になって出てきたのだと思います。できるできないは別にして個人的にはもう一度裁判を日本人の手によってやり直すべきだと思います。
by (2005-05-09 05:39) 

しょちょう

今日、二人の韓国人の方達とお話したのですが、この問題は日本と中・韓とでは根本的なperceptionが全然違うので、話をすり合わせるのが非常に難しいと感じています。一番現実的な解決法は「時間」かもしれません。
by しょちょう (2005-05-09 08:32) 

イエロー

 終戦を迎えたとき小学三ねんでした。思想的に何もわからず、 悲しい中、自由になった !子供心に 最初の印象として強い印象をおぼえています。自国を守るため戦地でのご苦労に頭が下がりますが、靖国参拝について、A 級戦犯に対して、良い悪いのでなく負けた責任者としての責任を果たすべきであり合ひ、されるべきでなかった。なぜ合ひ されたのか?・?アジアの感情、や責任者のご家族が何お考えているのか?日本人の責任の取り方   、その後の政治家の無責任体制に脈々と続き哲学のない日本だとおもいます。A級のご家族・顔・声を出すべきです。天皇陛下も、参拝できるように中国から言われない前から68歳生きて始終思っておりました。中国から言われて今話題とするのがざんねんです。
by イエロー (2005-05-29 10:35) 

しょちょう

イエローさん
なぜ合ひされたかというと、A級戦犯が日本にとって「絶対悪」とは見なされなかったからでしょう。そこがドイツにおけるナチス幹部の扱いと決定的に異なるところです。ところが諸外国ではA級戦犯はナチスと同類の悪と見なされています。この感覚の違いが諸問題を生んでいます。
by しょちょう (2005-05-29 17:42) 

イエロー

 有難うございました。戦争しなければ 成らないほど日本は追い込まれたのでしょう。難しいことはわかりませんが、(負けたおかげで、良かった)といわれる気持ちもあります。  国同士戦えば人が死ぬことがゆるされことが現実の世界  絶対悪?でない考えも分からないわけではありませんが、日本国民も同罪と言われることですね。対外的に国民は命令の中でしたがうだけです。
国民にも責任を問われるのはしんがいです。日本の武士道は何処に。
責任けじめは、あるべきです。外国からいわれつずける、のが悔しいですね
 ヒットラーと違うのは分かりますが、戦後60周年をドイツのように、日本なりのもっと真摯に具体化できたら千恵を出せたら平和お願う日本として、尊敬されると、思うのですが、あまいのでしょうか??。
by イエロー (2005-05-30 15:36) 

しょちょう

イエローさん
御意見ありがとうございます。イエローさんの御意見は以下の三点に要約されるかと思います
1:日本は諸外国から追い込まれていた
2:国民は上からの指示で戦争に参加させられた
3:よって日本国にも国民にも戦争責任は少ない

しかし残念ながら日本人以外の人達にこの考え方は全く受け入れられていません。僕個人も受け入れることは困難です。なぜなら「追い込まれるような状況に自ら飛び込んだ」とも考えられるわけですし、「当時の日本国民には自分自身の頭でものを考える力がなかった」とは思いたくないからです。戦争世代の方たちが敗戦のショックから立ち直り次のステップに進むために上記の1-3の説明が必要だったのは充分理解できます。しかし日本以外の場所では誰もこのような考えを持っていないのも確かです。これが日本と諸外国がいまだにこの問題で軋轢を生じる原因になっています。
by しょちょう (2005-05-30 17:29) 

イエロー

 外国の反応でなく、敗戦国としてA級戦犯 は、  分し すべきです。
日本の国民感情で、合ひ、ということは、テレビに出ている人たちだけですやっと今日のテレビで、東条の孫が、でている。 何おきけるか!
合ひ 反対強く反対します。いかりをもっています。 
戦後すべてにおいて、無責任時代になっています。  けじめです!!
by イエロー (2005-06-05 08:03) 

しょちょう

お気持ちはよくわかるのですが、あまり感情的なコメントを連続して投稿しないで下さい。お願いします。最後の3つは削除させていただきました。
by しょちょう (2005-06-05 09:11) 

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