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素手のムエタイ [ムエタイ・ガオグライ]

前回タイに行ったときにバンコクのルンピニー・スタジアムでムエタイの試合を見た。このルンピニー・スタジアムというのはラジャダムナン・スタジアムと並びムエタイの二大殿堂と言われている。ムエタイやキックボクシングにはいろんな団体やタイトルがあるが、この二大スタジアムのチャンピオンになることはタイのみならず世界中のキックボクサーの憧れであり、もしなれれば物凄いステータスになる。僕が訪れた日のルンピニースタジアムの試合はどれも技術レベルが高く、たいへん興味深かった。

しかし、僕がこのタイ滞在中に最も衝撃を受けたのはこのルンピニー・スタジアムの試合ではなく、チェンマイのビデオ屋で買った「素手のムエタイ」のVCDである。

この「素手のムエタイ」、正式名称はミャンマー・ラウェイとかミャンマー・ムエイとか言うらしい。僕の買ったVCDではタイとミャンマーの国境の村で両国から選手が5人づつ出で試合をするというものだった。素手といっても両手に白い紐のようなものを巻きつけている。一緒に見たタイ人のおじさんの話ではこの紐に細かく砕いたガラスを塗料と一緒に塗りつけるのだという。そんな危険なことを本当にしているのか真偽のほどは定かではない。

ルールはムエタイと一緒のようだった。パンチ、キック、肘、膝を使用可能で、5ラウンド制でKOがなければ引き分けとなる。ちなみに日本で公開されたタイ映画「マッハ!!!!!(タイ名オンバク)」にもこのミャンマー・ラウェイのシーンが出てくる。

試合前にワイクルーという踊りを舞う。タイの選手は全員ムエタイ選手なのでワイクルーをよく心得ていて、いつものようにゆっくりと上手に踊る。一方、ミャンマーの選手はワイクルーなるものを全然知らないようで、むちゃくちゃな踊りをする。手足をばたつかせるだけだったり、ディスコダンスみたいなのを踊ったりしている。全然音楽とあってない。もうこの時点で僕の目には勝敗の行方は明らかだった。

試合が始まると、技術の差は明らかだった。次々とミャンマーの選手がノック・アウトされていく。失神や流血は当たり前。素手に近いので一発当たればお終いである。なぜこんな危険な競技をこんなにレベルに差がある人達でするのかよくわからない。おそらくそれが何百年も続く伝統だからなのだろう。タイとミャンマーは仲が悪いので、戦争をする代わりにこんな競技をしているのかもしれない。それにしても危険だ。ホラー映画を見ているようだった。

面白かったのが、そのうちの一試合。ブアカーオのような体格のムエタイ選手が、明らかに素人と思われるミャンマー選手と試合をしていた。1ラウンド開始直後、ムエタイ選手のストレートがミャンマー人の顔面にクリーンヒット!ミャンマー人は戦意を喪失。審判に向かって「あいつ強すぎるから別の奴に変えろ」と主張する。審判がそれはできないと言うと、今度は「じゃあ俺は完全な素手でやる」と言って手に巻いた紐を解き始める。それを見ていたムエタイ選手も紐を解き始める。するとミャンマー人は「解くのは俺だけだ!」と怒りはじめる。

このVCDを僕と一緒に見ていたタイ人のおじさん達は「卑怯だ!卑怯だ!」と叫んでいる。ラオカオをコーラとM150で割って飲んでいるので、もう酔いがかなり回っている。

結局両者とも完全に素手になり試合再会。やはり力の差はあきらかで、あのムエタイ独特の鞭のようにしなるキックがノーガードの腹や顔面にヒットしていく。

ここでミャンマー人は自分のコーナーに退却。そこで試合を見ていた別のミャンマー人にタッチして選手交代。何だこりゃ、プロレスのタッグマッチか?見ている観客はほとんどミャンマー人なのだが、やんややんやの大喝采で喜んでいる。ムエタイ選手は表情ひとつ変えずにこの光景を見ている。

僕と一緒に見ているタイ人のおじさん達は興奮をさらにヒートアップさせる。「うおおおー、ミャンマーの野郎許せねえ!やれー!やっちまえ!」とすごい剣幕で騒いでいる。

さてまた試合再会、ムエタイ選手は先ほど同様、ビシバシと蹴りを入れる。新しいミャンマー人はどんどんコーナーに下がっていく。お、またタッチか?そう思った瞬間に「バキッ」というすごい音とともにハイキックが側頭部にヒット!ミャンマー人は地面に倒れたまま10カウントとなった。この壮烈なKOシーンの後、ムエタイ選手は何事も無かったかのようにリングを去る。人が入ってきてこのミャンマー人を揺さぶったり水をかけたりしているのだが、ピクリともしない。その後どこかに運ばれて行くところまで映していたが、結局この人は一度も動かなかった。死んだのだろうか?ちょっと心配だ。

一緒に見ていたおじさん達はずいぶん満足したようだった。「あーすっきりした、サバーイ、サバーイ」と言いながら帰って行った。

K-1もたいがいひどい興行をするが、このミャンマー・ラウェイは本当に無茶苦茶だ。ルールはあってないようなもの。それにしてもあのタッチして出て行った選手。ずいぶん罪深い人だと思う。

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タイ演歌とガオグライ

http://blog.so-net.ne.jp/syocho/2005-04-06-1


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コメント 8

HANA-PINgPONg

>この紐に細かく砕いたガラスを塗料と一緒に塗りつける

まままっ.....まじですか?超人プロレスのよな無茶な設定....
 へたしたら自分の拳がやられちゃうじゃないすか。
その後の展開といい、恐ろしすぎです。
 
by HANA-PINgPONg (2005-04-11 01:39) 

しょちょう

HANAさん、いらしゃい。
このVCDかなりお勧めです。僕は2枚(2年分)買ったのですが、次に行ったときにもっと買いたそうと思っています。
by しょちょう (2005-04-11 01:48) 

三平太

こういう関係のVCDは、イギリスにはもってきてないんですか?
例のタイ演歌のミュージックビデオといい一度見てみたいですね。
by 三平太 (2005-04-11 06:20) 

しょちょう

残念ながら持ってきてないのです。
今更ながら後悔してます。
by しょちょう (2005-04-11 06:34) 

三平太

残念!
by 三平太 (2005-04-12 02:17) 

fragancia04

ミャンマー・ラウェイっていうんですか。このことだったんですね。
また面白いムエタイネタがあったら紹介してください。
ガオグライとモーのシーンは、私の今の携帯画面です。一緒です。
今後ともよろしくお願いします!
by fragancia04 (2005-04-13 13:12) 

しょちょう

fragancia04さん
Kさんですよね?いらしゃい。
こちらこそKさんのムエタイにかける情熱には刺激をうけております。
今後もよろしくお願いします。
by しょちょう (2005-04-13 17:37) 

mu-taro

ミャンマーネタ書いていたのねぇ。検索したら、ヒットしてきました。
by mu-taro (2005-11-13 16:33) 

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