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タイ映画 「トム・ヤム・クン」 [作品評論]

先週東京に行ったときに見ました、タイ映画 「トム・ヤム・クン」

 

世界中で無数の映画が作られている現状において、タイで作るとしたらこれしかないだろうという、まさにそのツボをピンポイントで突いたような作品であります。

この映画、前作「マッハ!!!!!」同様に、アクションシーンにおいてワイヤーなし、早回しなし、スタントなし、CGなしという完全に時代に逆行したつくりになっていますが、むしろそういった点に「生身の人間のリアルなアクションを見せたい」という作り手のこだわりを感じることができます。主演のトニー・ジャーの卓越した身体能力、本気で殴られても文句を言わないやられ役の人たち、とても先進国では許されないような低い安全基準等々があって初めて可能となる作品です。

ストーリーは前作同様、あってないようなものです。前作は盗まれた仏像を取り戻すために田舎の青年が悪と闘うというものでしたが、今回は取り戻す対象が小象に代わっただけです。

やはり圧巻は格闘シーン

「死亡遊戯」の五重塔を彷彿とさせるような悪の巣窟に乗り込み、階段を上りながら次々と敵を倒す長いシーンがあるのですが、驚いたことに、このシーン、途中一度もカットがありません。おそらく20分はあるだろう思われる壮絶な格闘シーンを一度も切らずに撮影する技術と根性は素晴らしいの一言。

それから、瞬く間に49人の骨を折るシーンもなかなかの見所です。スティーブン・セガールのお株を奪う「ボキッ」「バキッ」という効果音の連続。まさに骨折音の協奏曲です。

さらにブラジルの格闘技カポイエラ、中国武術、プロレスと実に多様なバックグラウンドの敵と古式ムエタイの技で闘うシーンも見所です。本気で殴ってます。見ていて痛々しいです。でもそれこそが格闘映画の原点だということを、この作品は教えてくれます。

トニー・ジャーの強さは前作からさらにグレードアップし、もはや神憑ってきた感があります。まるで歩くだけで相手が次々と死んでいくシリーズ末期のケンシロウのように、今のトニー・ジャーは手を挙げるだけで雑魚達は勝手に吹っ飛ばされていきます。要約すると、今回のトニー・ジャーは、ブルース・リーとスティーブン・セガールとケンシロウとジャッキー・チェンを足して4で割ってパクチとナンプラーをふりかけたような存在になっています(どんな存在だ)。

ムエタイ好きの立場から言わせてもらうと、今回はあまり「ムエタイ臭さ」が漂っておらず、やや不満の残るものでありました。前回のようなカオサン通りの闇リングや、ミャンマー国境でのラウェイ(素手ムエタイ)といったマニア流涎のシーンはなく、小奇麗なオフィスやビルでの戦闘にはいささか興ざめ感があります。でもまあそれを差し引いてもお釣りが来るぐらいの迫力あるアクションであることは保障します。

ということでこの作品、近年稀に見るお買い得アクション大作と呼べるでしょう。お勧めです。


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みらの

ブルース・リーとスティーブン・セガールとケンシロウとジャッキー・チェンを足して4で割ってパクチとナンプラーをふりかけたような存在・・・とてもよくわかる表現です。感動・・・!
by みらの (2006-04-30 01:31) 

しょちょう

みらのさん
わかってもらえてよかったです。ぜひ一度ご覧ください。損はさせませんよ。
by しょちょう (2006-04-30 07:22) 

Tomo

タイトルがトムヤムクンで、取り戻すのが象で、戦うのがムエタイと、良い意味でも悪い意味でも対世界を意識した作りだと思いました。インターナショナルになっていくのは良いのですが、次作以降も変に洗練されることなく、タイのテイストを残してほしいものですね。
by Tomo (2006-04-30 08:17) 

チョムプー

私も見ましたよ!ゾウさんが名演技でしたねえ。私のブログでも、トニー・ジャーとでっかいプロレスラーさんとの格闘シーンは、ガオグライ対チェ・ホンマンを思い出したとコメントありましたが、私もそう思いましたよー。今回もコメディアンのマムさんがシドニーでもひょうひょうと演技していてよかったですね。しかも、「王様のブランチ」という番組のトニーインタビューで、あれだけの格闘シーンをとってもみな「青あざ」ができたくらいで、大怪我はなかったとのこと、適役さんも格闘のプロなんですねえ。
by チョムプー (2006-04-30 21:41) 

Watcher

帰国したらチェックします…「映画辛口批評」でも、いい点数をつけてましたし…
by Watcher (2006-04-30 22:44) 

ひら

私はもうすでに2回「トムヤムクン」を観ています^^;
1回目は地元で25日に、2回目はガオの試合を見に行った28日に東京で。
地元で観たときには無かったけど、東京ではTシャツ売ってましたね。
買おうかな、と思ったけど、結局買いませんでした。
by ひら (2006-04-30 23:58) 

しょちょう

Tomoさん
まさにおっしゃる通りだと思います。下手に色気出してハリウッドなんか意識しはじめたらもうお仕舞いでしょうね。ますます多くの予算でますますprimitiveな匂いを醸し出す映画を作る。これですね、タイ映画の生きる道は。

チョムプーさん
アジア象って頭いいんですね。あれだけの演技はイルカやサル以外ではほとんど無理でしょうね。ガオグライvsホンマン、懐かしいですね。昨日のK-1にもホンマンが出ていましたが、ガオグライはあんな怪物相手に互角以上の試合をしたんですね。恐るべしです。そうそう、TITANSでは天田と引き分けたそうですね。今年も活躍してほしいものです。

Watcherさん
だいたいどこのサイトでも好評ですよ。ぜひご覧ください。映画代あるいはレンタル代の元は必ず取れると思います。

ひらさん
おお、そのTシャツ欲しいです。僕が見に行った封切日にはまだ売ってませんでしたね。ガオグライ、ひきわけだったようですね。相変わらずヘビー級の選手相手にいい試合をしますね。佐藤戦やラジャでの試合で減量に懲りて、今年はヘビーに特化するかもしれませんね。
by しょちょう (2006-05-01 23:25) 

タイトル自体辛そうですが(笑)やはり、そういった意味の名づけ方ですか?
by (2006-05-03 13:48) 

Jeab

しょちょう さん
お久しぶり!
「トムヤムクン」・・・
私はまだ見ていません。
「マッハ!!!!!」も!
今度タイへ帰ったらVCDを探してみます。
by Jeab (2006-05-03 22:35) 

しょちょう

yutakamiさん
たしかに辛い辛い映画ですよ。実際はタイらしさを出そうということで「トム・ヤム・クン」なのでしょう。もちろんあのスープは映画には全く出てきませんが。

Jeabさん
こんにちは。ぜひ見てください。タイではもうDVDもVCDも発売されているはずですよ。女性にとって面白い作品かどうかはわかりませんが・・・
by しょちょう (2006-05-03 23:30) 

にこちゃん

しょちょうさん、皆さん、こんにちは、初めましてー。
格闘技が好きで、ガオグライ、ブアカーオやタイにも興味を持っている
にこと申します。検索したらこちらがでてきてとっても面白いのでちょく
ちよく拝見しています。
トムヤムクン面白そうですね。見たいです!
マッハ・トムヤムクンに続いてもう第3弾のお話もあるそうですよ(^^)
これからも楽しみですね。韓国ブームの次はタイブーム!
by にこちゃん (2006-05-08 14:16) 

しょちょう

にこさん
ガオグライとブアカーオのファンの方ですか。ようこそ、お越しくださいました。ブアカーオの方は相変わらずの最強人間ぶりですが、ガオグライは出番が減りましたね。先日のTITANSは引き分けだったそうですが、今後もK-1のヘビー級に出続けるのでしょうかね?
トムヤムクンぜひ見てください。アクションだけに関して言うと、他に類を見ないほどの作品です。
by しょちょう (2006-05-09 20:02) 

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