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ブアカーオがナーイカノムトムになった日(1) [ブアカーオ]

一年3ヶ月前、僕はブアカーオを「定められた負け組」だと書いた。K-1首脳部にとってブアカーオは魔娑斗優勝を阻む最大の阻害因子であり、ブアカーオの足技をいかに合法的に封印するかが首脳部の懸案事項であった。K-1がこの2年間、「ブアカーオ封じ」のために払った努力量は驚愕に値する。ルールの改定だけとってみても膝蹴り連打の禁止、首相撲の禁止、そして最後は「掴み」そのものの禁止。ムエタイ選手の持ち味をすべて殺す、まるで真綿で首を絞め殺すような手を使ってブアカーオを苦しめてきた。

今回のトーナメントも勝ちあがった際の試合間隔が最も短くなる、つまり最も不利な第4試合にブアカーオを配置し、かつローキックを多用し相手を消耗させることにかけては右に出るもののいない佐藤をその相手に当てた。実際、ブアカーオが非常に不利な立場にあることをK-1自体ももはや隠そうとはしなかった。以下は試合直前に発表されたK-1オフィシャル・ウェブサイトの記事からの抜粋である

『2年前に彼(ブアカーオ)が優勝したときとは、すべての面で状況が違う。しかもトーナメント一回戦は佐藤嘉洋が相手だ。たとえ勝ったとしても、かなりのダメージを負う可能性が高い。(試合順が)トーナメント一回戦の最後というのも、体力回復を考えれば大きなハンディになることだろう。それに加え、ヒザ蹴りの制限がある新ルールにもまだ適応できていない。ブアカーオへの向かい風は、強く吹いているといえよう・・・・・』

ここに書いてある「向かい風」の構成要素、つまりルール改定、試合順、マッチメイクはすべてK-1サイドが恣意的に行ってきたものであって、不可抗力の結果生じたものではない。これは「私たちがブアカーオにハンディを与えてますよ」と宣言しているようなものである。ここ3年間、本当に強い「チャンピオン・クラス」の選手に一度も勝っていない魔娑斗をまるで現チャンピオンであるかのように奉り立てる一方で、ブアカーオをいびり続けたK-1首脳陣。実に醜い。

タイの小学校では「ナーイカノムトム」の伝説を習う

『14~18世紀に栄えたアユタヤ王朝はその当時、常に隣国・ミャンマーによる侵略の危機にさらされていました。その中で編み出されたのが、素手で敵兵を倒すための武術「ムエタイ」です。武芸として長い歴史を持つムエタイは数多くの伝説のファイターを生んでいます。なかでも、最も有名なのが、アユタヤ時代、とらわれた仲間の釈放をかけて、隣国ミャンマー王の御前で試合をした「NAI KHANNOM TOM」(ナーイ・カノムトム)です。その試合ぶりは体のあらゆる部分を使ってミャンマーの武術家を次々に倒し、「このタイ人は全身に毒を持っている」と怖れられたといわれています。(タイ王国大使館ウェブサイトより抜粋)』

ブアカーオもかつて「現代のナーイ・カノムトムになりたい」と言っていた。どんどん不利になっていくルール、あからさまな八百長判定をするジャッジ達、その心中はいかばかりか、推して知るべしであろう。敵地という逆境の中で勝ち続けたナーイ・カノムトムに我が身を重ね合わせたのはむしろ必然といえる。このブアカーオの発言を僕はboutreviewで読み、いたたまれない気持ちになったものだ。

そんなブアカーオが、今夜、本当にナーイ・カノムトムになったのだ。

続く


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HIRO

ブアカーオが優勝したときは目頭が熱くなりました・・・正に逆境を跳ね除けての優勝・・かっこよすぎるぜブアカーオ。本当に心から尊敬する。

蹴りを封じたことによってブアカーオの内なる力が開放された感じでした。
K-1は墓穴を掘った。もうブアカーオを止められない。彼の適応能力は凄過ぎる。
最後に「本当におめでとう」
by HIRO (2006-07-01 01:18) 

しょちょう

HIROさん
僕も周囲の迷惑を顧みず、絶叫していました。
得意の蹴りを封印しての完全優勝。その価値は計り知れません。
ブアカーオ凄すぎます。
by しょちょう (2006-07-01 02:08) 

DIXI

あらゆる逆境を乗り越え、それを力に変えて、王者として相応しい
内容で見事に優勝したブアカーオの姿は感動的でしたね。
by DIXI (2006-07-01 04:12) 

しょちょう

DIXIさん
おっしゃるように彼は逆境をむしろ自分の糧にすらしてますね。多くの感動をありがとうと言いたいです。今後も応援しましょう!
by しょちょう (2006-07-01 13:05) 

キック経験者ですが…

まずは、ブアカーオにおめでとう!ですね。サワーも真の実力を証明できたんじゃないでしょうか。

私は開幕戦のスレッドでクリンチ無しルールによる密着時の妙な間を指摘しましたが、今回もほとんどの選手が少なからずそれに戸惑っているように見えました。両選手ともブレイクをうながしてるのに、ひとり「ファイッファイッ」と言ってるレフェリーが滑稽。。。しまいには選手たちが相手の背中をポンポン叩きあって自主的にブレイクする時も…。

でもブアカーオは違いました。

カラコダ戦でも時折見せた密着時での異常な反応のよさ、高密度の筋肉で守られた強靭な肩(サワー戦で最初のダウンをとったあの打ち方、かなり肩に負担がかかるんです)。クリンチ時でもパンチの攻防を強いられる、このおかしなルールは考えようによってはブアカーオに有利だったのかもしれません。あのゼロ距離射程からの重いフックも自分のスタイルに合わせて徹底的に練習したのでしょう。

そんなこんなで、ブアカーオはナーイ・カノムトムになりました。やった!
by キック経験者ですが… (2006-07-01 13:55) 

新参者

わたしも会場で絶叫してしまいましたよ。サワーのコメント(ブレイク言った後に
ブアカーオがパンチ打った)が少々気になりますが、ほかのレフリーーはぜんぜんブレイク言わなかったりしてるから、大丈夫ですよね?あの反射神経のよさは天性のものですね。またルール改正されないことを願っています。
by 新参者 (2006-07-01 17:01) 

にこちゃん

うれしかったです
ブアカーオ感動で泣き崩れてましたね。本当に良かった!!
どの試合も彼がヒーロー
余裕で勝っているようにみえました

ジョギングしてる様子が流れましたが、
見知らぬ鳥が、猛スピードで横断していました
ピョーンピョーンピョーン..!
少し面白かったです

素手で敵兵を倒すための武術だったんですね
ムエタイって格好いい。。
by にこちゃん (2006-07-03 11:45) 

しょちょう

キック経験者さん
そうですね、クリンチ無しルールにみんな戸惑っていましたね。ゴング・格闘技の情報によりますと、K-1内部もこの点に関して混乱しているようです。セーム・シュルトとブアカーオを潰す目的以外に何の必然性もないルール変更をするもんだからこんなことになるのです。おまけに潰れるはずだったブアカーオにV2される始末。ドタバタ・コメディーを見ているかのようです。爆笑
いづれにせよ、ブアカーオ優勝嬉しいですね。ファンとして、ともに喜びを分かち合いましょう!

新参者さん
会場に行かれたのですか、それはとてもうらやましいです。僕もいつか生ブアカーオを見たいです。サワーは何かを勘違いしたのだと思います。それが何なのかは僕も分かりません。ビデオを見る限り、レフェリーはブレークしていませんし、バッティングや金的なども起こっていないようです。

にこちゃんさん
どの試合も余裕を残しての勝利でしたね。驚いたことに、試合後ボーリングに行ったそうですよ。恐るべき男です。とにかく優勝してよかった。応援しがいのある選手です。
by しょちょう (2006-07-03 21:29) 

中学生

ブアカーオに、そんな苦労があるなんて知らなかった。            これからも、ずっと応援する!! 
by 中学生 (2007-07-10 11:08) 

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